絞り込み検索
お菓子の種類
材料
特徴

店主の独り言 サンモール編 Vol.1

  • 喫茶店
  • 商売のきっかけ
  • パンと喫茶の話
  • スコーン・マフィン
  • パン

大型スーパーの裏にそびえる3階建てのジャングル

 子供のころ千葉県の八千代市というところにいたことがあります。駅前には「ユアエルム」という今でいうショッピングセンターていうのだろうか、デパートのなり損ないみたいな。 その裏に木々植物に囲まれなぜか三越のようなライオンが入口に鎮座している店がありました。

「珈琲喫茶サンモール」。ステンドグラスのような看板にそう書かれている店であるのは幼稚園の頃から知っていたのだが小学校6年のころついにこの店の扉を開ける時が来たのだ、、、当時隣には炉端焼きがあり親と夕飯を食べた後珈琲が飲みたいと親が扉を開けた。 私の心はバクバクドキドキ、なんたってお化け屋敷だ、変人が住んでるだと子供の間では言われていたのだから当然。

カランカランとドアベルを鳴らし中に入るとこれまたジャングルのようなごちゃごちゃした店内。4人席に座ると奥からこれまた凄い女性がお水を持ってきた、簡単に言ううとよくイメージされる「大阪のおばちゃん」をそのまま具現化した姿、ヒョウ柄のスパッツにダボッとしたちょっと光沢のあるTシャツに茶髪のチリチリのパンチパーマに襟足が長いやつ(笑) しかし物腰は優しくとても丁寧だった。私は珈琲なんて飲めないのでココアを注文、これがすべてを結び、今にまで続くココアになるなんて思ってもいなかった。 さて、ジャングルのような店内に見えたものは所狭しと置いてあり飾ってある世界各国の民族アイテムやミニチュアの鎧や剣、日本の道具などミニチュアで作られたものがとにかくあちこちにあるもんで子供の私以上に大人のほうが興味津々。 単純に「うわぁ~」って感じ。そしてココアってこんなに美味しいのかと思ったサンモール初体験。

それから10年以上経ち17になった私は一旦は離れた八千代の地に再び一人暮らしで戻ることになりあのユアエルム裏のコンビニローソンで夜勤のバイトを始めたのだが毎朝同じ時間に大阪のおばちゃんが来るって聞いていてすぐにサンモールの方だとわかった(笑) 久しぶりに見かけたサンモールさん、しかし退職する1年の間一度も声は掛けられなかった。。。 それがずっと引っかかっていてある日サンモールに行こう!と奮起。あの時と同じ音を立てて開いたドアの向こうはあの時と何一つ変わっていない店内が広がっていた。

「どうぞ」と言われ奥のテーブルはちょっと怖かったので奥からは見えないドアわきのテーブルに着席。これまたあの時と同じようにゆっくりとお水を運んでくれる女性に「ココアをください」と伝えると。。。「もう辞めちゃったのね、、、」と。ローソンでの日課の中に私も残っていたのである。。。初めてサンモールに来た時のこと、ローソンで声を掛けられなかったこと、ずっとココアが飲みたかった事を話しそれを言葉少なめにウンウンとニコニコしながら聞いてくれた。 奥にマスターらしき男性がいたのはわかっていたので帰り際に覗きがてら「ごちそうさまでした!」というと新聞を読んだまま「はーい」と生返事、、、こわ~、サンモールこわ~

それから多い時は週に2回は通うようになったサンモール、そのころにはママと呼ぶようになり色々珈琲も教えてもらい少しだけど飲めるようになってきた。 この日も覗きがてら「ごちそうさまでした!」というと新聞をバサッとおろし「次、いつくんだ?」。。。え?え?次?明らかに動揺した私は上ずった声で「あ、あし、明日もきちゃおうかなっ!」て言うと「バカ、そんな無駄使いすんな!」と真顔で言われた。。。帰り道、笑顔というか何故かニコニコしていたのを今でも覚えている。

1週間後サンモールに向かいいつものドア脇の席に行くと「なんでそっちいくんだよ!こっちコイ!」と奥から怒鳴り声が。。。恐る恐るカウンターのあるほうへ行くと相変わらず新聞を読んでいる男性が鎮座。。。新聞に目をやったまま「1週間も何やってたんだ!」え~!!!お前が無駄使いすんなって言ったんだべよ~という気持ちのまま苦笑いしていると今日は飲ませたい珈琲があるからそこ座れとな。ママがお水を置きながら「今日は来ないのか、いつも何時に来るんだって」小声で言う。 やだぁ~マスター素直じゃないんだから~と思いつつ待っているとマスターがカクテルグラスに入った珈琲を出してきた。え?ナニコレ、ブラック珈琲の上にクリームが浮いているそれは「サンモール」という珈琲だそうだ。ママが言うには試行錯誤してマスターがつくったお店の名前を付けた珈琲、すごく美味しいのよって。。。グラスを持つとさらにビックリ「温かい」のだ。一口飲むとクリームの間から甘~い珈琲が口に流れ込み一気に珈琲の香りが広がる。「お前珈琲飲めねんだろ、これなら飲めるだろ」とマスター。

この日、サンモールを出たのは23時。8時間滞在、店内の飾りのこと、サンモールの生い立ちや私のこといつの間にか23時になっていたのである。その間何組かお客さんが来たがマスターは一切声を掛けることはなかった。そして。。。「マスター!すんごく美味しかった!遅くまですみませんでした」というとしらんぷり。。。するとママが「この人、マスターって呼んでも返事しないわよ」と衝撃のお言葉と本当に何も言わない、おどおどしているとママが小声で「ボスって言わないとダメなのよ」はぁ~?「ぼ、ボス美味しかったです、遅くまですみませんまたきます」というと「おぅ、あさってまたコイ!」。。。子供か!

そんなボスは実はとんでもない人物だった。。。あの「あの世とこの世は地続きだ」の俳優をあのバカ呼ばわりするボスの正体とは!? 次回サンモール編 Vol.2どうぞお楽しみに!

お菓子だより 一覧にもどる

投稿記事

相談する

お気軽にご相談ください!

お菓子職人へのお問い合わせは
「お菓子職人紹介ページ」より直接お願いします。