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店主の独り言 サンモール編 Vol.2

  • 喫茶店
  • 飲食店をやりたい
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  • スコーン・マフィン
  • パン

俳優人生そして珈琲喫茶

 入口のすぐ脇にレジスペースのあったサンモール、そこに小さい昭和チックな長方形の映画のポスターが数枚貼ってあってそれはおなじみのミニチュアコレクションの一つだと思っていた私、ふとママに映画のポスターもコレクションしてるの?と聞くと「違うわよ、ボスの出た映画のポスター」とまさかの返答。 え!とカウンターを見るとボスがドヤ顔でピースしていた。 真相を確かめるべく帰るのをやめてカウンターに戻ったのは言うまでもない。。。そう、彼は俳優をしていた過去を持ちあの丹波哲郎の先輩に位置するまさにボスな人だったのだ(笑)

残念なことにあまり目は出ず、主演を張ったのは数回とのことでそれでも小さい頃の美空ひばりなどとも共演しているのである。昭和40年頃の話である。。。その後彼は新たな人生を送るため世界を旅し、好きだった珈琲の魅力をさらに強め、昭和47年に八千代の地に三階建てのビルを購入しサンモールを開業した。奇しくも私の生まれた年にサンモールも誕生したことにボスも何かを感じてくれたようだった。

ボスは墨田区の出身、ママは浅草出身で若いころからの知り合いだったそうでそれこそずっとボスを見てきたそうで関東大震災の時はお互い浅草界隈におりそれはそれは大変だったと凄まじい当時の話も聞けた。 サンモールに通い始めて数年がたち珈琲豆の話や挽き方や淹れ方、産地の話を散々聞かされたいして飲めないのにやたら当時詳しかった(笑) 20を過ぎたころには珈琲を飲むことがめっきり減った、それは行くとボスがウィスキーのボトルを持って待ってるから。自慢じゃないが他の客には一切飲ませない、常連が飲みたいと言っても10年早いと飲ませない、そんなボスとママとの関りを誇りに、自慢に思っていた。 楽しそうに酔って大声で話すボスが大好きだった、トイレから出てくるといつもしゃかいの窓が開いていてママに怒られてた。ある日窓全開でトイレから出てきたボスは「お前な、結婚てのはうんちの付いたパンツをな~んにも言わずに洗ってくれる奴とするんだ!」って(笑) あの時はさすがにママは新聞で叩いてた、ちょっと顔を赤くして。。。

それからボスは店に居ることが段々少なくなり、体調が悪い日は店には出ないという。それでもあいつが来るかもと店に降りてしばらく待っていたこともあったそうで、当時は携帯なんてなくて固定電話だけ、たまに留守電にママからメッセージが入っててなるべく行ける日を伝えるようにしていた。

ある3/28の日いつものようにサンモールに向かうとママがケーキと当時好きだったグァテマラを出してくれた。なぜかこの日数年前に話した誕生月を思い出したそうで二人が祝ってくれた、ボスはママに三階のある「あるもの」を持って来いと言い、しばらくすると一冊の冊子を持って降りてきた。それがVol.1のアイキャッチ画像です。 あれは船橋の西武百貨店で開催した「今清水・美似コレクション」の時に先方が企画製造した冊子で手元に残っていた最後の一冊だと、さすがのママも「いいの?」と聞いていた貴重なものだった。。。「こいつにやらないで誰にやるんだ!」と震える指でペンを取りサインを書いてくれた。。。その日初めてサンモールの踏み込んだ話、今までお客さんと過ごした時間、自分を息子のように思ってくれていたこと、喫茶店という商売の大変さと楽しさを話してくれた。この時にはすでに私の中で「こんな店をやりたい」と思っていた気がします。

それから何度かいつものように通うもだんだんシャッターが空いている日が少なくなり電話をするのもな、、、と思いながら自分も仕事の関係で引っ越すことになり手紙で連絡先を知らせる感じで八千代を離れた。それからしばらくして電話すると出ないことが多かったママが出てくれてずっと入院生活をしているとのことだった。

それからほどなくしてママから寂しい知らせが届いた。 そしてサンモールを私に引き継がせたいと言っていたと聞いて私はそれは出来ないと即答した。なぜだろう、サンモールは私にとって重かったのだ。とても大きな存在で偉大でなにより幕引きはボスと共にするべきだと思った。

同じ豆を使っても同じ道具を使ってもボスの珈琲、サンモールの珈琲にはならない。それはもう、サンモールじゃないのだ。今回のアイキャッチ画像は冊子の巻末にボスが世の若者に発したメッセージです。

何かに夢中になること 何かを始めることに遅いという言葉は無い。自分はこんなおじさんになってからこれだけコレクションを集めた、好きなことに時間を使った。と胸を張ったボスらしい言葉(かなり柔らかいけどね)。

今私もボスにもう少しで追いつく年代になってしまい、いまだ何も形にできてなくてやり遂げてなくてまだまだ顔見せできない。それでも自分のペースで転びながら戸惑いながら商品を作りお客様に美味しいと言ってもらい自分の中の「サンモール」を形にする日を目指して頑張っています。 これを見ている何かに向かっている、何かをためらっている人はどうか諦めないで自分の信じる商品を作り、追い求めてほしい。きっとそれはあなたにしかできない事だから。

って本心で思うわけです。最後、暗くなってしまったけど私にはこんな飲食店に対する思いや思い出があり、自分に言い聞かすためかな~なんて。 このCONELを見てくれている人はきっとお菓子やパン、珈琲紅茶が好きな人が多いですよね、ここのメンバーにはたくさんの夢を持った作り手がいます。ぜひ一人でも多くのお店を味わってみてください。もしかしたら人生変わるような味や作り手に出会えるかもしれませんよ!

ハトマメは今月2週、お休みをいただいてしまいました。次回の営業は2/18日曜日。

コナト清澄白河 12:00-16:00 お待ちしております

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