\CONELメンバーインタビュー/
店主の『いちおし』なんですか?
Vol.05 DREAMERS COFFEE/コーヒーレモネード
CONELメンバーが作る『いちおし』を紹介する、この連載。
今回登場するのは、お菓子職人ではなくバリスタの岡田さん。
お菓子屋さんとコーヒー屋さんが併設する、阿佐ヶ谷FOOCO(フーコ)で活動中です。
■「コーヒーレモネード、やりなよ!」
今回登場する店主は、お菓子職人ではなくバリスタの岡田さん。
メールでインタビュー依頼の連絡をしたときから「お菓子を作ってない僕が、いいんですか?嬉しいです。ありがとうございます」と、丁寧な返信。普段から物腰の柔らかく話しやすい方だが、文字でのやり取りも心地よい。
岡田さんが活動しているのは、阿佐ヶ谷にあるFOOCO。シェアキッチンで唯一、お菓子屋さんとコーヒー屋さんが併設する店舗だ。いちおしの『コーヒーレモネード』は、同じくFOOCOで活動中のお菓子屋さんとのコラボで生まれた夏限定商品。アイスコーヒーの苦みの中に、レモンの酸味と炭酸がシュワっと弾ける。
「使用しているレモンシロップは、帝国ホテルなどでパティシエをされてきたL’atelier de TAKAKO(ラトリエドゥタカコ)さんのものです。
店主のタカコさんと営業が一緒になった時におしゃべりしていたら『コーヒーレモネードって知ってる?今年絶対に流行るから、やりなよ!』と言われたんです。それで、とりあえずその時に僕が持っていたコーヒー豆とタカコさんのレモンシロップで試作したのが始まりでした」
「やりなよ!」と言われて、「やってみよう」と素直に移すのが岡田さんらしい。
ただ完成までは、中々思うような豆が見つからずに苦労したという。
「レモンがすっぱいので、エチオピアやケニアなど酸味系の豆をとにかく組み合わせていたんです。でもどの豆にしても全体が上手くまとまりすぎて、なんの特長も単調な飲み物にしかならなくて。炭酸でお腹はタプタプ、カフェインも普段以上に摂っちゃってるのに、全然完成しませんでした(笑)」
そこで、レモンと近い味を探すのではなく、あえて苦みのある豆を組み合わせたところビンゴ。甘さ、すっぱさ、苦さが絶妙に混ぜ合わさったおいしさが生まれたという。思い起こせば、いちばんはじめに即興でタカコさんと試作した時はグァテマラとコロンビアのオリジナルブレンドで作り「なかなかイケる味」だったそう。苦めの豆への原点回帰だ。
そこからさらに突き詰めて、今は自家焙煎のグァテマラを使用している。お客さまからの反応も上々で、完売する日も多いそう。
「こうやってインタビューでお話する機会をいただきましたが、僕一人ではコーヒーレモネードをお客さまに届けることは出来ませんでした。素材や食の流行にも詳しいタカコさんがいたからこその商品なんです。
タカコさん以外も、シェアキッチンの皆さんは素材にこだわりがある方が多く、信頼できる“舌”をお持ちなので、悩んだら試飲してもらったりと頼りにしています。バリスタの方も、ネルドリップで淹れる方がいたりとお一人ずつスタイルが違うので、いつも学ばせてもらっています」
岡田さんの言葉の一つひとつに、FOOCOで活動するメンバーへの尊敬と感謝の気持ちを感じる。
■「見た目」から入ったコーヒーだけど
今ではバリスタとして活動しながらラテアート教室の講師をしたり、コーヒー豆で染め物をしたりとコーヒーの世界にどっぷりの岡田さん。だが意外にも、ハマるきっかけは「スターバックスコーヒー」だそう。メジャーな存在にちょっと驚きつつ、詳しくお話を聞いてみた。
「大学三年生の時に、シアトルの少し南に位置するポートランドに留学したのがきっかけです。シアトルにはスタバの一号店があって、コーヒーカルチャーが盛んな街なんです。みんなこぞって行っては、あのカップを手に持っているわけで……なんてカッコいいんだ!って(笑)。はじめは見た目から入って、コーヒーにハマっていきました」
そうして帰国後すぐに、ハンドドリップセット一式を購入。自分でコーヒーを淹れつつ、色々なカフェに足を運ぶようになったそう。
それまで、コーヒーには苦いイメージがあったという岡田さん。チェーン店ではなく個人が営むお店で浅煎りのコーヒーを飲んだことで豆の味の違いがよく分かり「紅茶やフルーツジュースと似ている」と感じるようになったそう。
「それまで僕がコーヒーとしてイメージしていたのは、昔ながらの喫茶店で出てくるような苦みと酸味だけで構成されていた味だったんです。それが浅煎りを飲んだことで、ダイレクトに豆の味を感じられて、高級なフルーツジュースのように感じました。
コーヒー豆はさくらんぼのような果肉の中にある種を炒って作られるので、より一層そう思ったのかもしれません」
聞き手が分かりやすいように、コーヒー豆の説明を添えてくれるところに岡田さんの優しさを感じる。
ただ、岡田さんが販売しているコーヒーは「浅煎り寄りの中煎り」で焙煎しているという。なぜ豆のおいしさをダイレクトに感じられる浅煎りにしないのだろうか。
「浅煎り、僕は好きです。でも、コーヒーを飲み慣れてない方や浅煎りをはじめて飲む方は『あれ?これってコーヒー?』と感じやすい味だと思うんです。
たとえば高級レストランに食事に行くと、サービスの方がお料理について色々と説明してくれますよね。『ほぅほぅ』と興味深く聞きはするけど、ちょっと構えてしまって疲れちゃう(笑)。だから僕のコーヒーは『なんかちょっといつもと違うな。でもおいしいな』くらいの味に留めておきたいんです。
中煎りにすることで世の中の人が想像するコーヒーの味を残しつつ、浅煎り寄りにして豆のおいしさとの出会いを提供したいと思っています」
そこから先は、興味を持ってくださった方が自分に合うやり方でコーヒーを楽しんでもらえばいいのかな、と笑う岡田さん。もちろん聞かれれば詳しく説明するけれど、きっかけになれるだけで嬉しい、とも。
ふと店頭の看板に目をやると、DREAMERS COFFEEのコンセプトが書かれたポスターが。
岡田さんの淹れるコーヒーは、いつ飲んでも決して押しつけがましくなく「よかったらどうぞ」と差し出されるような優しい味わい。コーヒーに詳しくなくとも、ほっとするおいしさがある。その理由が分かった気がした。
取材・文=炭田友望/写真=CONEL
DREAMERS COFFEE/岡田さん
一杯のコーヒーを通して、「ゆとり・つながり・彩り」を。金曜の夜と土曜の昼をメインに、阿佐ヶ谷FOOCOで活動中。この8月でFOOCOを卒業し、地元の愛知へ戻る予定。これからの活動にも注目を。
・活動キッチン:FOOCO(阿佐ヶ谷)
・営業日:DREAMERS COFFEEのinstagramをご確認下さい。
・Instagram:https://www.instagram.com/dreamers_coffee/