\CONELメンバーインタビュー/
店主の『いちおし』なんですか?
Vol.04 Riz Lie Amande/シューアマンド
CONELメンバーが作るお菓子は、一つひとつが個性的。
個人で製造から販売まで行なっているお店がほとんどだから、味はもちろん、材料やラッピングまで、作り手の「これが好き!」が詰まっています。
そんな魅力的なお菓子のなかから、店主が選ぶ『いちおし』をご紹介。
今回登場するのは、Riz Lie Amande(リリアマンド)の未紗(みさ)さん。
なかなか見掛けない、米粉で作られた『シューアマンド』がいちおしです。
■原因不明の「鼻血」の正体
未紗さんがシェアキッチンで活動をはじめたのは、2023年の春から。
現役パティシエとしてお店で働きながら、神田「JITA」と人形町「菓子河岸」の二店舗でご自分のブランド「Riz Lie Amande(リリアマンド)」の販売を行ない、週末はマルシェにも出店。いつお会いしても、元気いっぱいのメンバーさんだ。
そんな未紗さんは、パティシエながら小麦粉アレルギーを抱えている。
「専門学校で製パンの実習があるたびに、鼻血を出していました。いま思えば小麦粉アレルギーの影響なのですが、当時は『おかしいな~変だな~』と思うだけで、鼻にティッシュを詰めながら授業を受けていました。
アレルギー症状のひとつに鼻血があることを、その時は知らなかったんです」
ちょっと恥ずかしそうに教えてくれた。
卒業後の就職先は大手メーカーで、クリームを絞ったりケーキに飾り付けをしたりがメインの仕事ということもあり、しばらくはアレルギーのことに気付かずに働いていたそう。
だが、仕込み段階から手掛けたいと思い個人経営のお菓子屋さんに転職したことで、アレルギーが悪化。病院で検査して、小麦粉アレルギーということがわかったという。
振り返ればこれ以前も、目や皮膚のかゆみや喉の違和感もあったそう。アレルギー発覚により、パティシエを辞めて一般企業に就職するか、悩んだという未紗さん。だが、「レシピ開発から自由にお任せします」というレストランの求人を友人に紹介され、転職。小麦粉ではなく“米粉”でお菓子をつくるパティシエとなった。
しかし、地方の小さなレストランということもあり、パティシエは未紗さん一人。当時まだ21歳というから、先輩がいない環境に不安はなかったのだろうか。
「それが、すっごく楽しかったんです(笑)。パティシエは私一人ですが、シェフが料理もお菓子も作れるおじさまで色々学ばせてもらいました。それに、レシピを自由に考えられるのが、とにかく面白くて。お客さまに『こんなにおいしいのに、ホントに米粉なの?』と聞かれたりして、やりがいがありました」
■開業資金を貯めた、まさかの方法
しかし、2019年12月に勤め先のレストランが閉店。未紗さんは持ち前の前向きさで「自分のお店を持とう!」と上京するが、今度はコロナウィルスが世界を震撼させる。
東京で就職したパティスリーでの仕事も、緊急事態宣言の影響でお店が閉まっているので「全然働かせてもらえませんでした…」と振り返る。そんな八方塞がりの状況で未紗さんが始めたのが、フードデリバリーの配達員。
「こんな状況下で頑張って心を込めてお菓子を作っても、軌道に乗せることは難しいと思ったんです。なので『今は開業資金を貯めよう!』と気持ちを切り替えて、配達員に挑戦してみることにしました」
なんと最盛期は、大手デリバリー会社を転々としながら稼いでいたそう。「今はもう返却しましたが、家に三つリュックがある時期もありました(笑)」と笑う
ちなみにこの配達員時代の経験を活かし、「Riz Lie Amande」はwoltに出店している。お家にいながら「Riz Lie Amande」の味を楽しめるので、人形町エリアにお住まいの方はぜひご賞味を。
https://wolt.com/ja/jpn/tokyo/restaurant/riz-lie-amande
■グルテンフリーは、過度にアピールしない
そうして配達員として働きながら開業資金を貯めた未紗さんは、2022年の夏に再びパティシエとなる。新たな勤務先は、ロースイーツのお店だ。
ロースイーツ(Raw Sweets)とは、自然の食材をRaw(生)のまま食べることで、ビタミンやミネラル、酵素を活かしたまま取り入れるスタイルのお菓子。小麦粉のほか卵や乳製品、白砂糖も使用しないのが特長だ。
制約が多いのでレシピを生み出すのは大変そうだが、未紗さんは「私、縛りがある方が燃えるタイプなんです」と、あっけらかんと語る。
また、このお店で働きはじめたことで、お客さまがお菓子を選ぶ“基準”について意識するようになったそう。
「私のようにアレルギーがある方はもちろん別です。でも多くのお客さまは、おいしくて可愛いお店ということで選んで、食べに来てくださっている。それなら、ごく普通のパティスリーに足を運ぶように私のお店を選んでいただき“実はグルテンフリーだった”というお菓子を作りたいと思うようになりました」
ある調査によると、日本人のうちグルテンフリー生活を心掛けているのは約4%。そんな方だけを相手にしていては商売として成り立たないので、“おいしくて可愛い、実はグルテンフリー”のお店として「Riz Lie Amande」を営んでいる。
取り扱うお菓子はすべてグルテンフリーだが、いちおしはシュークリームとのこと。
レストラン時代も人気の一品だったそうだが、今はサイズも配合も大幅に変えている。
「当時はプチサイズで焼いていたんです。大きく焼くと、何度試作しても生地同士が合体して一枚のシートみたいな状態にしかならなくて…(苦笑)。もう諦めかけていたんですが、シェアキッチンのオーブンで焼いてみたら一発で成功したんです!
生地の配合も工夫しましたが、ずっと使っていたオーブンでも焼けなかったのでシェアキッチンには感謝しかありません」
にこにこ嬉しそうに語る姿に、こちらまで笑顔になる。
ちなみにシュー生地も中身のクリームも米粉を使用して作られたシュークリームは珍しいようで、インターネットで検索して数点見つかる程度。未紗さん自身、自分以外のパティシエが作る米粉シュークリームは食べたことがないらしい。なんともレアな逸品だ。
もちろん、米粉だからそれでOKというわけではないのが未紗さんのお菓子づくり。皮は米粉やアーモンドパウダーで作った厚切りクッキーをのせて焼くことで、ザクザクとした食感に。中身のクリームは、コーンスターチのほか、生のアーモンドを絞った手作りのアーモンドミルクを使用している。
さらにこのアーモンドミルクを作った時に生まれる“絞りかす=アーモンドパルプ”は、焼き菓子に混ぜ込むとしっとりとしておいしくなるそう。Riz Lie Amandeの、フィナンシェやパウンドケーキに使われている。
シューアマンドは人気があるため、今後“レモン味”の開発も考えているとのこと。
「実は中身のクリームは、もうレモン味のおいしいものが出来上がっているんです。あとは皮だけなんですが、なかなか形にならなくて苦戦中で……どうしてもシュー皮をレモンの形にしたいんです!
お客さまがレモン型のシュークリームを目当てに来たくなるような、キャッチ―なものを作りたくて試作を重ねています」
困難に立ち向かうほど燃える未紗さんなら、完成させる日も遠くはなさそうだ。
そう伝えると「夏が終わる前になんとかします(笑)」と答えてくれた。
一ファンとして、期待大で待っています。
取材・文=炭田友望/写真=CONEL
Riz Lie Amande(リリアマンド)/未紗(みさ)さん
店名は、フランス語の「お米(Riz)」と「アーモンドパルプ=アーモンドの絞りかす(Lie Amande)」が由来。アーモンドパルプやアーモンドミルク、アーモンドパウダーなどを贅沢に使った、グルテンフリーのお菓子店という意味で名付けられた。
この春にオープンしたばかりだが、どんどんファンが増えている注目のお店。CONEL MarketでのEC販売も行なっている。
また、現在開催中の「アレルギー対応スイーツコンテスト」に、シューアマンドを使った「サントノーレ・ココ・パッション」でエントリー中。9月には決勝戦が行われるので、優勝を期待したい。
・活動キッチン: 菓子河岸(人形町)
・営業日:毎週月曜日17~20時(菓子河岸)
・Instagram:https://www.instagram.com/rizlieamande/