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店主の『いちおし』なんですか?|Vol.12 Le Tronc

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  • 塩ハーブクッキー
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\CONELメンバーインタビュー/
店主の『いちおし』なんですか?
Vol.12 Le Tronc/塩ハーブサブレ

CONELメンバーが作るお菓子は、一つひとつが個性的。

個人で製造から販売まで行なっているお店がほとんどだから、味はもちろん、材料やラッピングまで、作り手の「これが好き!」が詰まっています。

そんな魅力的なお菓子のなかから、店主が選ぶ『いちおし』をご紹介。

今回登場するのは、Le Tronc(ル・トロン)の櫻井さん。

季節のフルーツを使ったお菓子や、お酒に合うお菓子を作っています。

いちおしは、おやつにはもちろん、おつまみにもぴったりな「塩ハーブサブレ」です。

■健やかなる時も、病める時も。お菓子と共に

今回お話を聞くのは、Le Tronc(ル・トロン)の櫻井さん。物心がつくよりも前にお菓子づくりをしていて「気付けば、お菓子づくり歴は半世紀超えです」とのこと。幼稚園の頃はパンやお菓子づくりが得意だったお母様と一緒に作り、小学生になってからはお菓子のレシピ本をお小遣いで買っては作り、胸をときめかせる少女時代を送っていたそう。

 「もう今の人は知らないと思うんですけど、昔は『天火(てんぴ)』というガスコンロの上に直接乗せて使うオーブンでお菓子を焼いていたんですよ。お菓子の本も今みたいにたくさん種類がなくて、今田美奈子先生の本を買って何度も何度も繰り返し読んでいました」 

と、懐かしむ。

大学卒業後は、銀行に就職。その後、転職していくつかの金融機関などで働きながらも、個人が主宰する教室からプロが店で教える教室まで色々なお菓子教室に通い、習い事としてお菓子づくりを楽しんでいたという。

が、そのうち「極めたい性格だから、自分でもお教室やカフェをやってみたくなっちゃったんです」という櫻井さん。レコールバンタンで製菓の基礎を、ル・コルドンブルーでフランス菓子について学び、ディプロマを取得。金融関係の仕事は、土日もなく働くのが当たり前だったというから、目が回るような忙しさだ。 

「この時はちょうど平成になったばかりで『24時間、戦えますか?』と、栄養ドリンクが売られていた時代だったんです。私も若くて体力があったし、それがふつうかなって……(笑)。なによりすごく忙しかったけど、お菓子を作る時間は私にとって至福で、全然気になりませんでした」 

当時に想いを馳せながら、櫻井さんがカラリと笑う。その後、ご縁があり知人が営むパン屋さんの厨房を借り、はじめて教室を開くことになったという。「お菓子教室の先生」としての、櫻井さんのスタートだ。教室業は順調で、また同時期にカフェで働いたことをきっかけに、お茶と一緒にお菓子を楽しめる「自分のお店」を持つことを考えるようになったそう。

だが、店舗となる物件を探し始めた時に、大きな病気が分かる。治療をして幾分か回復したものの、お菓子づくりに欠かせないバターの香りで気分が悪くなる日々が続き、教室やお菓子の販売をすべてストップせざるを得ない事態に。「でも、自分がやめさえしなければ終わりじゃないので」と、櫻井さんが爽やかに言い切る。 

「活動を続けるって思うと難しく感じちゃうけど、やめなければいいだけだって気付いたんです。病気でお菓子が作れなくったって、自分が『やめるって決めたわけじゃないし』って思っていれば、それは続いてるってことです」 

バリバリ働き、お菓子づくりを全力で楽しみ、大病をしながら50歳を超えても現役でお菓子屋さんをしている櫻井さんだからこその、力強い言葉だ。

店名のLe Troncとは、フランス語で「木の幹」という意味。地に根を張り、木のようにしなやかで、おおらか。そんな櫻井さんの人柄を感じた。

■おやつにも、おつまみにも合う「塩ハーブサブレ」

 様々な事情が重なりながらも、お菓子を作り続けてきた櫻井さん。50代となり仕事が落ち着いたこともあり、今度はアシェットデセール(皿盛りのデザート)を出すレストランで働いてみたいと思ったそう。そんな折、運よく年齢制限のない求人を見つけ、面接へ向かった。

 「夜に働ける方を募集していたので、残念ながら採用にはなりませんでした。でもそのお店のシェフがとても親切な方で、私の履歴書を見て『今すぐご自分で何かやった方がいいですよ』と言うんです。しかも『まずはシェアキッチンなんてどうですか?』と教えてくれたので、世の中にはそんな素敵なものがあると知ることができたんです(笑)」

 これが2022年7月のこと。帰宅してすぐにパソコンを開き「シェアキッチン」と検索、見学を申し込んだのが阿佐ヶ谷にあるシェアキッチンのFOOCO(フーコ)だった。

そうしてシェアキッチンを契約、開店準備をして、その年の11月に櫻井さんはLe Troncとして活動をはじめる。ちなみにこの助言をくれたシェフが営むレストランには、お礼がてら今でも時々訪れるそうだ。

PHOTO:FOOCO店頭での販売(Le Tronc提供)

 そんなLe Troncのいちおしは、ローズマリーとピンクペッパーが香る「塩ハーブサブレ」。20年以上作り続け、ホームパーティーに差し入れや、頼まれてギフト用に作ることも多かったという、櫻井さんのお菓子の中でも人気の逸品。友人づてにお店のオープンを聞きつけて「以前食べて美味しかったのが、忘れられなくて」と来店した方が、なんと20人以上もいるらしい。中には、20年ぶりに塩ハーブサブレを口にしたという方も。配合は当時とほぼ同じだそうで、変わらないおいしさに喜ばれたという。

 ひとくち食べると、生地のあまじょっぱさが、なんだか懐かしい味わい。いくつも試して選んだ塩は、イギリス王室御用達という「マルドンの塩」を使用。塩の結晶が舌の上ではらはらと崩れ、まろやかな旨味が広がる。また、櫻井さんによると、サブレの形が細長いのも特長だそう。

「私がお酒好きなので、ワインに添えてあっても違和感のないようなスタイリッシュさを目指して、この形にしました。お酒と一緒につまんでちょうどいい大きさになるよう、一つずつサイズを測りながらカットしています。

手間もかかるし非効率だし、特に夏場は生地がだれがちなので、こんなことふつうのお店では中々しないと思います。大変ですが、自分のお店だからこそできるこだわりです」

手のかかる子ほど可愛いといった様子で、櫻井さんが目を細める。

塩ハーブサブレは、もちろん紅茶やコーヒーと一緒におやつとして食べてもいいが、いける口の方はぜひお酒と。赤ワインや柑橘系の白ワイン、ホワイトビールなどとのペアリングがおすすめとのこと。

もっと詳しく知りたい方は、ぜひLe Troncへ。

取材・文=炭田友望/写真=CONEL、BLANKET

Le Tronc/櫻井さん

Le Tronc (ル・トロン)は、フランス語で“木の幹”を意味します。自身の名前から“幹”という文字を、そして店主のありたい姿、しなやかにたおやかに、みんなが集まりちょっとひと息したくなるような木からつけました。素材を生かした五感が開くようなお菓子です。季節の果物を使った焼菓子やお酒に合うお菓子も人気です。

・活動キッチン:FOOCO(阿佐ヶ谷)

・Instagram:https://www.instagram.com/__letronc.__/

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