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店主の『いちおし』なんですか? | Vol.7 Sweet Art

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\CONELメンバーインタビュー/
店主の『いちおし』なんですか?
Vol.07 Sweet Art/ボックスケーキ

CONELメンバーが作るお菓子は、一つひとつが個性的。

個人で製造から販売まで行なっているお店がほとんどだから、味はもちろん、材料やラッピングまで、作り手の「これが好き!」が詰まっています。

そんな魅力的なお菓子のなかから、店主が選ぶ『いちおし』をご紹介。

今回登場するのは、Sweet Artの笛木さん。
うっとりするような世界を表現した、シュガークラフトを手掛けています。

甘く美しい、シュガークラフトの世界

シュガークラフトとは、砂糖で作られたペーストで色とりどりのデコレーションを施したイギリス発祥のケーキのこと。現代のウェディングケーキの原型になったとも言われている。笛木さんがシュガークラフトの作品を投稿する「Sweet Art」のInstagramにはキラキラした世界が広がっていて、「いいね!」をタップする手が止まらない。

そんなシュガークラフトと笛木さんとの出会いは、当時通っていたお菓子教室。入口にシュガークラフトで出来たウェディングケーキが飾ってあり、一目惚れをしたそう。

「ちいさい頃から大好きなお花が美しく表現されているのが素敵で『これを生涯の仕事にしよう!』と、心に決めました。お菓子も大好きですが、シュガークラフトのような少し珍しいもの方がビジネスになると思ったんです」

この決断をした時、笛木さんは「20歳か21歳くらいだったかな」と言うから驚く。ただ、若い時はやりたいことが沢山あり、すぐに独立したわけではないそう。

「やりたいことを全部してからじゃないと、あっちもこっちも気になって、シュガークラフトに集中して取り組めないと思ったんです。だから、留学、活け花、ブライダルコーディネーター、秘書、いろいろ挑戦しました。秘書って、響きがかっこよくないですか?」

デキる人のイメージがあると伝えると「でしょ」と笑う、笛木さん。

写真=Sweet Art

そうして出会いから約10年の時を経た2006年、シュガークラフトの教室を開く。シュガークラフトは通常のウェディングケーキと違い、常温での保存が可能。結婚式の前撮り、本番、二次会と同じケーキを飾ることができるため、テーマのある結婚式を挙げるカップルに特に人気がある。

ちなみに今回『いちおし』に選んだボックスケーキは、プロポーズの際に贈られることも多いという。オリジナルメッセージを入れられるので、特別な贈り物として選ばれるんだとか。どの角度から撮っても見映えがするよう立体的に仕上げられているので、大切な思い出の1ページを彩るのにぴったりだ。

また、メディアやイベントで使うために、企業からの制作依頼も多いそう。

「企業の場合、商品を『なるべく忠実に作ってほしい』というオーダーをいただくことが多いです。6Pチーズのご依頼では、雪の結晶のマークはもちろん『SNOW』という文字も指定のフォントがあるのできっちり表現しました。本物と同じサイズだと細かすぎてシュガークラフトでは表現できないので、本物よりは大きめで作ることになるとご説明してから制作に取り掛かりました」

写真=Sweet Art

食べるのがもったいない出来だが、土台となる中身は発泡スチロールを使用しており、食べられないそう。PRイベントなどで俳優さんが手に持ってアピールすることもあるため、持ちやすいよう“あえて”そうしているんだとか。

また、色味の再現もなかなか難しいらしい。シュガーペーストは少量ずつこねながら色味を作っていくので、ひとつだと指定の色になっても、こねたペースト同士を合わせた時に「あれ?」となり再調整が必要になることがよくあるんだそう。色づくりだけで2、3時間かかることも。

「ちょっとでも嫌だな、と思った時は一から全部やり直します。誤魔化さない、妥協しない。お金をいただくからにはプロ意識を持ってやる。お仕事だから『やっぱり出来ませんでした』なんて途中で投げ出すことは、絶対にしません」

そうして、自分がOKを出せるクオリティのものを送り出すことで、次回以降のご注文や、ほかのお客さまの紹介につながるそう。

■ビジネスであって、趣味じゃない

写真=Sweet Art

シュガークラフトの写真をいくつか見せてもらった中で、目に留まったものがある。金色の輪に羽が生えたような、紫のケーキだ。『舞台・ハリーポッター呪いの子』のPRのために制作したそう。オブジェとでもいうのか、シュガークラフトの枠を超えているように見える。造花や針金と組み合わせて一からすべて笛木さんが作ったというが、アイディアはどのように出しているのか。コツなどあるのか訊いてみたところ「考える。ひたすら考える」というシンプルな答え。

「コツはなくて、思い付くまで考える。これに尽きます。だって、それが私のお仕事だから。
昔はどうしても思い付かなくて時間との闘いになったこともあったけど、私が寝なければいいだけなので。寝なければ、その分時間が作れます。今はもうそんなことないですけどね(笑)」

当たり前のように言うが、なかなか出来ることではない。

笛木さんのお話を聞いていると度々出てくる「お仕事だから」という言葉。シュガークラフトのかわいらしい世界観と異なる“硬め”なワードチョイスが気になり、理由をたずねてみた。

「私はシュガークラフトを、ビジネスとしてやると決めたんです。趣味ではない、ただそれだけです。

教室をはじめた2006年は、まだアイシングクッキーも浸透していないような時代だったので、周りの人には『難しいんじゃない?』とよく言われました。でも私はやると決めてもう会社も辞めていたので、HTMLを独学で勉強して、タグを書いて、教室のホームページを作りました。SEO対策もすごく力を入れて、集客にも励みました。それが私のお仕事だから」

この日から、二週間後。笛木さんから、ご自分のアトリエを持つことにしたと連絡がきた。

インタビュー中に「いつかは」と聞いていたが、まさかこんなに短期間のうちに話が進むとは。ビックリしていると「もう決めたから」と、笛木さんがサラッと笑った。

取材・文=炭田友望/写真=CONEL、Sweet Art

Sweet Art/笛木さん

CONEL お菓子職人紹介

ケーキデザイナー。イギリス式シュガークラフトの専門ブランドとして、オリジナルケーキの制作・販売や、教室でのレッスンを行なう。三越で行なわれる英国展やクリスマスワールドなど催事への出店も。CONEL MarketでのEC販売は引き続き行なう予定なので、是非手に取ってほしい。

・活動キッチン:FOOCO(阿佐ヶ谷)※2023年8月まで

・Sweet Art HP:http://sweetart.jp/

・Instagram:https://www.instagram.com/sweetart_yoshiko/

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